Interview 03

五感浴バスルーム・プロジェクト
共同開発者インタビュー【後編】

茶室の思想と響き合う、“没入空間”の深化

 

都会の中でも、まるで自然の中の露天風呂に浸かっているような時間を体験できる、saibathのオリジナル・バスルーム「五感浴バスルーム」。最終回となる第3回では、その開発の裏話や、空間に感じる“茶室的機能”などについて、小久保隆さんご自身の思索を深く掘り下げていきます。聞き手は引き続き、弊社バスルームプロデューサーの大塚晃です。

革新的な企画が、スピード感を持って形になった理由

 

大塚:今回は開発の裏側や、小久保さんの個人的な想いについてもお聞きできればと思います。

 

小久保:プロジェクトとしての進行は驚くほどスムーズでしたね。普通なら年単位でかかるような内容だと思いますが、様々なバスルームを作ってきたスペシャリスト、大塚さんとタイミングよく組むことで数か月で完成した。ある意味“革命的なお風呂”だったと思いますよ。

 

大塚:弊社saibathは、「好きなものに囲まれた、自分らしいお風呂をつくる」というのがコンセプトのブランドですが、今回のバスルームは、音と映像によって“癒し”を追求するという意味で、まさに唯一無二の空間になったと思います。音響面の構造は、どんなところがポイントでしたか?

 

シンプルで良質な音を支える、目に見えない工夫

 

小久保:音響の機材自体は、実はそこまで特別なものではないんです。むしろ課題だったのは、防湿・防音の処理でした。スピーカーにとって湿気は大敵なので、設計段階から細かく配慮する必要がありました。

 

大塚:その点は、私たちのほうでもかなり工夫しました。バス乾燥機の出力を高め、空間が常に乾いた状態になるように設計しています。壁材には調湿作用がある天然木を使い、さらに音響的な配慮として、吸音性能のある左官仕上げ材モールテックスも組み合わせました。

 

小久保:実際、理想的な音空間というのは、音の直接音と反射音のバランスに左右されるんです。反射音が多すぎると、どうしても濁る。その点、このバスルームはコンパクトで、スピーカーとの距離も近い。結果として、過剰な反射を気にせず、音をダイレクトに届けられるんですよ。狭さを利点に変えた事例ですね。

 

大塚:むしろ、都会に住む方こそ、このサイズ感で良質な音を楽しんでいただけるのではないでしょうか。

茶室からの着想──“もてなし”と“集中”の空間へ

 

大塚:先日、音楽関係の方をスタジオに招かれたとき、「五感浴バスルーム」もご覧いただいたそうですね。

 

小久保:はい。10数名来てくださって、特に音響メーカーの方々には「これ、欲しい」と言われるほど反応がよかったです。
そのとき、ふと「これ、茶室に似てるな」と思ったんです。僕、裏千家を学んでいて正座しなくていいスタイルでお茶を点てるんですけど、バスルームって、掘りごたつみたいに湯船に座って、対面に人が座れる。そこでお湯を沸かして、お茶を点てる……そんなティーセレモニーのイメージが湧いてきました。

 

大塚:お風呂でお茶会とは、斬新ですね。

 

小久保:でも、この…五感浴バスルームって、考えるほどに“茶室的”なんです。ミニマルで閉じた空間。ロールスクリーンを下ろせば、完全な“非日常”が立ち上がる。自然の音と映像に包まれるその環境は、野点のような“湯の茶室”とも言えるんじゃないかと。

千利休の「精神空間」を、現代に置き換える

 

大塚:もし千利休が現代に生きていたら、使ってみてほしかったです。感想を聞きたかった。

 

小久保:そうですね。当時、千利休が信長や秀吉にお茶を点てたとき、それは単なる儀式ではなくて、例えば戦の前夜という緊張状態の中で、脳を深部から整えるための集中の儀式だったんです。
普段は使わない脳の領域を刺激するような、精神的な準備の場。五感浴バスルームのような、音・映像・光・湯・香りが整った空間なら、現代でもあの“質感”を再現できるんじゃないかと思いました。

 

大塚:なるほど。お風呂に入りながら、心が深く整っていくような空間ですね。

小久保:そうなんです。日常的な思考のレベルじゃなくて、もっと無意識に近い場所にアクセスできる。普段のデスクの上では降りてこないようなアイデアが、自然と湧いてくる。
僕にとって五感浴バスルームは、そんな“創造と集中”のための空間です。もちろんエンターテインメントとしての使い方もできますが、個人的にはクリエイティブな職種の方こそ、アイデアルームとして活用してほしいなと思っています。

 

“風”と“音”が運んでくれる、癒しの方程式

 

大塚:saibathでは、今後もさまざまなお風呂を提案していくつもりです。これまで世界中で数多くのお風呂をご覧になってきた小久保さんが、“ストレス解消”という観点で印象的だったお風呂はどんなものでしたか?

 

小久保:やっぱり環境が大事ですね。お湯の質や温度ももちろん重要だけど、風がそよいでくる露天風呂のような五感を刺激する環境が、いちばんストレスを解きほぐしてくれる。
そう考えると、大塚さんが最初に「五感すべてに刺激を与えるお風呂をつくりたい」と言ってくれたとき、すごく納得できたんです。

 

大塚:日本は全国各地に、その意味でも魅力的なお風呂が多いですよね。

 

小久保:そうなんですよ。逆に欧米の人たちって、基本的に湯船にじっくり浸かる文化がない。でもそれは、単に“よさを知らない”だけだと思うんです。
海外のバスタブは浅くて、すぐお湯が冷めてしまう。五感浴バスルームでは、一般より多めのお湯を張れるように設計しているので、ゆっくり浸かれるし、温度も下がりにくい。
この体験を世界中の人たちに届けられたら、きっとお風呂の価値観が変わると思います。

 

「五感浴バスルーム」という名前で、あなたの家にも

 

大塚:小久保さんと今回、共同で開発したこの空間は、「五感浴バスルーム」という名称で、今後一般のお客様にもご提供していく予定です。また、今後はインターネットのチャンネルでのサブスク配信も予定しており、今後も小久保さんの音の設計などのコンテンツも提供していきます。新築住宅への導入はもちろん、既存のお風呂のリフォームにも対応可能です。弊社では、これまで日本各地はもちろん海外でもバスルーム施工の実績がありますので、国内外を問わず、多くの方にこの空間を体験していただければと思っています。ご興味をお持ちの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

小久保 隆氏(Takashi Kokubo)
環境音楽家・サウンドデザイナー・メディアプロデューサー。株式会社スタジオ・イオン代表取締役、放送大学非常勤講師。

緊急地震速報のアラーム音や、電子マネー「iD」の決済音など、私たちの日常に深く関わる“機能音”を数多く手がける一方で、自然音や1/fゆらぎを活かした独自の環境音楽を40年以上にわたり追求。音で空間や心に癒しをもたらすその仕事は国内外で高く評価され、作品が収録されたコンピレーション・アルバム『Kankyo Ongaku』は2020年グラミー賞にもノミネートされた。

saibathは、まずお客様の「こんなお風呂にしたい」という希望をお伺いし、
ご予算に合わせ、さまざまなご提案をさせていただきます。
まずはお気軽にご相談ください。

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