Interview 02
五感浴バスルーム・プロジェクト
共同開発者インタビュー【中編】
「五感浴バスルーム」は、お風呂にいながらまるで自然の中にいるような世界を五感で体験できる、サイバスのヒーリング・バスルームです。前回のインタビューでは、開発の背景やコンセプトについてお話を伺いましたが、今回は、実際に使ってみてわかった多彩な活用方法や空間の広がりについて、開発協力者である環境音楽家・小久保隆さんに、バスルームプロデューサー・大塚晃が引き続きインタビューを行いました。
大塚:「五感浴バスルーム」は、「まるで自然の中にいるようなヒーリング空間」をコンセプトに開発しましたが、実際に小久保さんが使ってみて、バスルームとしてだけでなく様々な使い方が見つかったとうかがっています。どのように活用されているのでしょうか。
小久保:まずは、ホームシアターとして使っています。ピラミッド型の音響システムのおかげで映画館並みの音を楽しめる。次に、瞑想ルーム。低めの温度にしたお湯にゆったり浸かりながら、森や海辺の映像と音に包まれると、自然と集中できてスピーディに瞑想状態に入れるんです。
大塚:お風呂の時間以外にも、湯船にビーズクッションを入れてソファのように使われているんですよね。私も座らせていただきましたが、思った以上に落ち着きました。
小久保:本当に快適なんです。狭いバスルームですが、その狭さがむしろ“リッチな時間”を与えてくれる。このバスルームがあるだけで、空間の質がぐっと上がるんです。試しに2日間、母屋に戻らずスタジオとこのバスルームにこもって、自然の中モードで寝泊まりしてみたんです。キャンプ用の折りたたみベッドなんかも持ち込んで。その結果、腕時計型のストレスチェッカーの数値がすごく良くて、深い睡眠がとれていた。やっぱり自然の音の効果なんだと思います。
大塚:決して広い空間じゃないですが、狭すぎない絶妙なサイズ感ですよね。しかも窓代わりのモニターのおかげで、圧迫感もない。
小久保:そうですね。僕は茶道にも興味があるんですが、茶室って本当に必要なものだけを置いた、極限までそぎ落とした空間じゃないですか。それと、この五感浴バスルームって、どこか通じるものがある気がしています。人をもてなす空間であると同時に、自分自身と向き合う空間。だからこそ、お茶や軽食が楽しめるよう、取り外し可能なテーブルも設置しました。
大塚:2日間過ごしてみて、住まいに対する考え方にも変化があったと聞きました。
小久保:ありましたね。日本の一般的な家の間取りって、リビングがあって、食堂があって、寝室があって…って、どんどん部屋を増やしていく形ですよね。シアタールームも防音を考えた部屋を増設する形です。でも、それって敷地の広さありきの話で、都会ではなかなか難しい。特に一人暮らしのマンションなんかだと、狭い住居空間にバスルームが大きな面積を取っていたりして、毎日10分くらいしか使わないのに空間が“もったいない”と感じることもあると思うんです。でも、この「五感浴バスルーム」なら、その空間ひとつで何役もこなせます。お風呂としてはもちろん、ビーズクッションを入れれば居間にもなり、テーブルを置けば食堂にもなる。映像と音で包まれながら映画を観れば、立派なホームシアター。都会の狭小住宅でも、24時間を通して有効活用できる空間になると思います。
大塚:究極の形として、今後はベッドルームの真ん中に浴槽があるなんてこともやってみたいですね。部屋の真ん中に寝湯スタイルの浴槽とか。弊社おすすめのウェディボードなら、簡単に実現できると考えています。
大塚:モニターのサイズ感も重要でしたね。65インチにして正解でした。
小久保:あのサイズだと、ほぼ視野いっぱいに映像が広がるので、あの世界の中に入り込んだような感覚になりますね。また、モニターをコンピュータにつないであるので、パソコンモニターとしても使えます。そうすると、お風呂の中でも仕事や作業ができる。今度、キーボードを持ち込んで作曲もやってみようと思っています。
大塚:お風呂として、居間として、シアタールームや仕事場としても使える……発想次第でどこまでも広がっていきますね。ゲームを楽しむ人にもぴったりかもしれません。
小久保:そうですね。僕の場合は、旅で撮影した映像を流して楽しんでいます。去年スリランカで撮ってきた自然の風景をここで再生すると、まるで当時の空気ごと戻ってきたような感覚になるんです。
そんなふうに「思い出に包まれる空間」としても価値があると思います。そして今では、この空間で作曲したいと思うようになった。最初は「作曲スタジオにお風呂をつけた」つもりでしたが、今では「お風呂そのものが作曲スタジオになった」とすら感じていて。
「五感浴バスルーム」って、それくらい集中できる空間なんです。もしかすると今後は、ここが自分のメインの仕事場になって、大きなスタジオはレコーディングやボーカルの収録だけに使う……そんなスタイルに変わっていくかもしれません。いや、本当に。完成してみたら、自分でも驚くほどいろんな可能性が見えてきたんです。
※次回のインタビューでは、森のバスルーム誕生の裏側や、茶室の思想との意外な共通点についてお話をうかがいます。お楽しみに。
小久保 隆氏(Takashi Kokubo)
環境音楽家・サウンドデザイナー・メディアプロデューサー。株式会社スタジオ・イオン代表取締役、放送大学非常勤講師。
緊急地震速報のアラーム音や、電子マネー「iD」の決済音など、私たちの日常に深く関わる“機能音”を数多く手がける一方で、自然音や1/fゆらぎを活かした独自の環境音楽を40年以上にわたり追求。音で空間や心に癒しをもたらすその仕事は国内外で高く評価され、作品が収録されたコンピレーション・アルバム『Kankyo Ongaku』は2020年グラミー賞にもノミネートされた。